大阪大学 消化器内科学 自主臨床研究

 
研究課題 類洞内圧亢進をきたす慢性肝疾患患者における肝病態進展を予測する新規バイオマーカーの探索
実施期間 2030年3月31日まで
研究の対象 以下のいずれかに該当する患者さん

A.  大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学において、「Fontan関連肝疾患の臨床経過の解明と新規バイオマーカーの探索」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するダクラタスビル・アスナプレビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype2型C型慢性肝疾患に対するソホスブビル・リバビリン療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するレジパスビル・ソホスブビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するパリタプレビル・オムビタスビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するエルバスビル・グラゾプレビル併用療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「C型慢性肝疾患に対するインターフェロン・フリー治療の治療効果ならびに安全性についての検討」、「B型慢性肝疾患症例における核酸アナログの治療効果」、「消化器疾患患者に由来する余分血清の保管」に同意を頂き、かつ保存血清の二次利用に同意頂いて大阪大学大学院医学系研究科に血清保存している慢性肝疾患患者さん。

B.  東京大学医学系研究科消化器内科において、「肝臓疾患に関与する遺伝子とタンパク質の探索に関する研究」「小児肝線維性疾患の診断バイオマーカーの探索と臨床応用に資する研究」の研究計画書に同意頂いた慢性肝疾患患者さん。
研究目的・方法 目的:慢性肝疾患は、慢性肝炎から肝硬変、肝癌へと病態が進行し、そこには肝細胞死に伴う炎症性サイトカイン、ケモカイン等が関与するといわれています。近年、治療薬の進歩により、B型肝炎ではウイルスの制御が、C型肝炎ではウイルスの排除が可能となりました。治療薬によりウイルスがコントロールされ肝細胞死が抑制された慢性肝疾患患者さんにおいては、肝線維化あるいは肝発癌が抑制されるようになりました。しかし、肝硬変患者さんでは肝細胞死の指標であるALT値が正常化しても、肝線維化進展や肝発癌を認める症例が散見されます。このような患者さんでは、肝細胞死以外に肝病態が進展する機序の存在が考えられます。
肝硬変症は類洞内圧亢進を来す疾患であり、類洞内圧が亢進すると類洞内皮細胞、肝星細胞、クッパー細胞、肝細胞に圧負荷がかかります。圧負荷は細胞ストレスとなるため、類洞内圧が亢進した肝硬変患者さんでは、圧負荷が肝病態進展に寄与している可能性があります。
近年、Fontan手術により先天性心疾患患者さんの予後が改善した一方で、Fontan循環に伴う中心静脈圧上昇により、Fontan術後の遠隔期に肝線維化および肝発癌を来すFontan術後肝合併症(FALD)をきたすことが知られています。Fontan手術後5~10年の経過で、うっ血肝から肝硬変に進展し、中には肝癌を発症する患者さんがおられますが、FALD患者さんでは血液検査による肝機能検査は正常であることが多く、肝臓精査が遅れ、肝硬変・肝癌へ進展した状態で発見される場合があります。FALD患者さんでは、中心静脈圧上昇に伴う類洞内圧亢進が肝病態進展に関与している可能性がありますが詳細は明らかではありません。
現在、類洞内圧測定は日常臨床において困難です。一方で、門脈圧測定として、肝静脈圧較差(hepatic venous pressure gradient: HVPG)が海外では行われていますが、侵襲的検査であり本邦ではあまり測定されていません。近年、HVPGと超音波による肝静脈波形が相関しており、肝静脈波形が非侵襲的な門脈圧亢進症の診断法として注目されています。慢性肝疾患患者さんにおいて、類洞内圧を反映するバイオマーカーを同定することで、肝病態が進展している患者さんを囲い込み、予後改善に寄与する可能性があります。そこで本研究では、慢性肝疾患患者さんにおける血液から得られるタンパクおよび日常診療で行われる画像検査等を臨床情報と結びつけることで、類洞内圧亢進を予測する新規バイオマーカーの探索を行うことを目的とします。

方法:「Fontan関連肝疾患の臨床経過の解明と新規バイオマーカーの探索」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するダクラタスビル・アスナプレビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype2型C型慢性肝疾患に対するソホスブビル・リバビリン療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するレジパスビル・ソホスブビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するパリタプレビル・オムビタスビル療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「Genotype1型C型慢性肝疾患に対するエルバスビル・グラゾプレビル併用療法の治療効果ならびに安全性についての検討」、「C型慢性肝疾患に対するインターフェロン・フリー治療の治療効果ならびに安全性についての検討」、「B型慢性肝疾患症例における核酸アナログの治療効果」、「消化器疾患患者に由来する余分血清の保管」において、大阪大学の慢性肝疾患患者さんの臨床情報は、個人情報を加工され登録されています。また、「肝臓疾患に関与する遺伝子とタンパク質の探索に関する研究」「小児肝線維性疾患の診断バイオマーカーの探索と臨床応用に資する研究」において、東京大学の慢性肝疾患患者さんの臨床情報は、個人情報を加工され登録されています。登録されている患者さんの内、文書同意を得て2次利用可能な血清が保存されている患者さんにおいて、各分担施設で保存血清と臨床情報を合わせて個人情報を加工して代表施設に提供します。分担施設でバイオマーカーの測定を行う場合は、代表施設で保存血清と臨床情報を合わせて個人情報を加工して、代表施設から各分担施設に提供します。
各代表・分担施設で着目する血清タンパク濃度などを測定します。臨床情報と合わせて、肝発癌、肝線維化診断、入院イベントの発生および、生存に、測定したタンパク濃度などがバイオマーカーとして有用であるかを検討します。

研究期間
2030年3月31日まで
利用又は提供を開始する予定日:2024年6月
研究に用いる試料・情報の種類 情報:年齢、性別、病歴、血液検査結果、画像検査結果、予後・転帰等
試料:血液
外部への試料・情報の提供 診療情報や試料は、患者さんが特定できないように処理した上で記録媒体や郵送等で共同研究機関に提供します。
研究の資金源と利益相反について この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構受託研究費を用いて実施します。
研究を行うときにその研究を行う組織あるいは個人(以下「研究者」という。)が特定の企業から研究費・資金などの提供を受けていると、その企業に有利となるように研究者が研究結果を改ざんあるいは解釈したり、また都合の悪い研究結果を無視するのではないかという疑いが生じます。(こうした状態を「利益相反」といいます。)
この研究における利益相反は、大阪大学大学院医学系研究科・医学部臨床研究利益相反審査委員会による審査を受け、承認を得ています。我々はその審査結果に基づき、利益相反を適正に管理して研究を行います。
研究組織(利用する者の範囲) 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 疋田隼人
東京大学医学系研究科消化器内科 中塚拓馬
本研究に関する
問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。
 

照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
住所:大阪府吹田市山田丘2-2 電話番号:06-6879-3621
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 疋田隼人

研究責任者:
大阪大学医学部医学系研究科消化器内科学 疋田隼人

研究代表者:
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 疋田隼人